未来はキミドリイロ

サイコメトリックアイドルを目指す心理学徒の勉強部屋です。勉強・趣味などについて書いています。

弾力性と回帰係数

今読んでいる『状態空間時系列分析入門』という本に出てくる具体例が,政府データの分析のような桁数の大きいデータを扱ったものなのでよく対数変換を行ってから解析しているのですが,そんな中で「弾力性(elasticity)」という耳慣れない言葉が登場したため,理解のための覚書を綴ってみました。

状態空間時系列分析入門

状態空間時系列分析入門

  • 作者: J.J.F.コマンダー,S.J.クープマン,Jacques J.F. Commandeur,Sime Jan Koopman,和合肇
  • 出版社/メーカー: シーエーピー出版
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 単行本
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経済学の分野では当たり前に出てくる概念のようですが,私は心理学徒なので初めて見ました。


定義式は次の通り。


\begin{eqnarray}
E &=& \frac{dy/y}{dx/x} \nonumber \\
  &=& \frac{x}{y}\cdot \frac{dy}{dx}
\end{eqnarray}


言葉としては,xの変化率とyの変化率の比,言い換えればxが1パーセント変化したときに,yが何パーセント変化するのかという指標のようです。
上式の最右辺は分数が入れ子になっている真ん中の式を分解しただけのものです。

この弾力性というものは,xyの両方が対数を取っているときの回帰分析においてそのときの回帰係数と一致すると記述があったのですが,どうにも理解できず調べてみた結果,次の通りのようです。


まず,\log x微分すると以下のようになります*1


\begin{equation}
(\log x)^\prime = \frac{dlogx}{dx}=\frac{1}{x}
\end{equation}


この式を次のように式変形すると……


d\log x = dx/x


のようになり,この式の右辺は最初に挙げた弾力性の式における分母と一致します。
ここから,弾力性の式を次のように書き直すことができます。


E = \frac{d\log y}{d\log x}


この式を次のように書き直して


\begin{eqnarray}
d\log y = E\cdot d\log x
\end{eqnarray}


積分すると……

\begin{eqnarray}
\int d\log y &=& E\int d\log x \\
\log y + C_1 &=& E \log x + C_2 \\
\end{eqnarray}


ここでC_1, C_2を定数Cとしてまとめてしまうと次のようになるのです。

\log y = E\log x + C


この式は,x,yの両変数を対数変換してから回帰分析を行った式と同じもので,弾力性Eは両対数回帰分析における回帰係数\betaとして解釈可能であるということでした。

私は文系なので数学はからきしですが,文・理に関係なく,数学は勉強したほうが見えるものは多くて良いですね。

*1:対数微積分の基礎知識がアレすぎることを再確認しました